日本の法令：国際弁護士ヒロ　癒しの“法務室”カフェ：SSブログ

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タイ代理出産問題の男性には日本の刑法157条の犯罪（公正証書原本不実記載罪と免状等不実記載罪）が成立する可能性がある　 [日本の法令]

タイで日本人男性が多くの乳幼児を代理出産させたとされる問題で、報道によると、男性はカンボジアのカンダール州に約10ヘクタールの広大な土地を購入し、そこに一軒家を建て子供２人を育てていたという。

カンボジアの不動産登記制度は未整備な状況であるが、男性が取得した土地の登記簿が作成されているとしたら、土地登記簿や登記申請書類などを調べることで、この男性に関する様々な情報を得ることができる。

まず、重要なのは、この男性の国籍である。カンボジアでは外国人は土地を取得できない（カンボジア憲法44条）。土地登記簿上で、この男性が土地の所有者と記載されていれば、男性がカンボジア国籍を有していることが判明する。

このブログで以前に書いたとおり、日本人が帰化によりカンボジア国籍を取得すれば、日本国籍は自動的に喪失する（日本の国籍法11条１項）。この場合、国籍喪失届を国籍喪失の事実を知った日から１か月以内（外国にいるときは３か月以内）に提出しなければならず、日本のパスポートも返還しなければならない。これを怠ると法律違反となる（日本の戸籍法103条）。

そこで、次に問題になるのは、この男性の子供の国籍だ。報道によると、すでに何人かの子供は日本のパスポートを取得し、日本やカンボジアに向けてタイから出国しているという。

しかし、この子供たちが本当に日本国籍を有効に取得しているか、疑問が残る。男性がカンボジア国籍を取得した後に生まれた子供は、両親ともに日本国民でないことから、日本国籍を取得できない（日本の国籍法２条）。それにもかかわらず、この子供が日本のパスポートを取得しているとしたら、日本の刑法157条の犯罪（公正証書原本不実記載罪と免状等不実記載罪）が成立する可能性がある。

海外で生まれた子のために日本のパスポートを得るには、日本の役所に子の出生届を提出し、その子が日本の戸籍上に記載されなければならない。しかし、父親である男性がすでに日本国籍を喪失している場合、本来であれば国籍喪失届を提出し男性の戸籍が「除籍」扱いになるため、もはや子が戸籍上に記載されることはない。それにもかかわらず、男性が子の出生届をし戸籍上に子を記載させたとしたら、公正証書原本不実記載罪が成立することになる。有罪となれば、５年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる（日本の刑法157条１項）。

さらに、日本国籍のない子のために日本のパスポートを取得していることも、犯罪になりうる。パスポートを申請するには、子の戸籍謄本が必要になるが、日本国籍のない子の戸籍謄本は虚偽であり、これを利用して不正にパスポートを取得すれば、免状等不実記載罪が成立することになる。有罪となれば、１年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられる（日本の刑法157条２項）。

このように、カンボジアの土地登記簿や日本の戸籍などを調査すれば、国籍に関する様々な問題（犯罪の可能性）が浮かび上がってくるであろう。大きく報道されている問題であるから、日本の捜査当局や出入国管理当局も無関心ではいられまい。

【お断り】　
上記の意見は、カンボジア政府の見解ではありません。あくまでも私の個人的意見であることをお断りします。

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カンボジアでは、プノンペンにある“法務室”をご利用いただけます。証券取引所や外国の銀行などが入っている「カナディアタワー」という高層オフィスビルの18階にあります。これまでに多数のカンボジア進出の案件を扱ってきました。会社設立、QIP申請、NGO登録、土地賃貸借、不動産登記、担保権設定、労務管理、契約書作成、企業買収（M&A）、知的財産保護、マイクロファイナンス、債権回収、紛争処理など様々です。カンボジアの弁護士事務所と提携しています。また、政府の法律顧問としてカンボジア政府の内情にも詳しいので、お困りのことがありましたら、ご相談ください。

むさし国際法律事務所
代表弁護士　清原　博

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