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代理出産で1000人の子を計画!?国際的な特別養子縁組を視野に入れた計画なのか? [日本の法令]


タイの代理出産問題で、一部報道によると、父親とされる日本人男性(24歳)が昨年、関係者に「100~1000人の子供をつくろうと計画している」と話し、その動機として「世界のために私ができる最善のことは、たくさん子供を残すことだ」と述べたという。

確かに日本では少子化が深刻な社会問題であり、たくさんの子供を残すことは社会貢献の一つかもしれない。

しかし、代理出産により生まれた子一人ひとりにとって、様々な「法律の壁」が立ちはだかることを正しく理解しているのであろうか

タイでは、分娩した女性が法律上の母親となる(タイ民商法典1546条)。したがって、代理母が法律上、子の母親となる。もちろん、代理母は、出産後に母親として子を養育する意思がないであろうが、その子を分娩した女性である以上、法律上は子の母親となる。

そして、タイでは両親が共同して親権を行使するのが原則である(タイ民商法典1566条)。代理母も親権者である以上、父親(日本人男性)と代理母とが共同して親権を行使しなければならない。

出産後、代理母と子との間に法律上の親子関係が存在し、父親(日本人男性)だけの判断で親権を行使できるわけではないことを、この男性は正しく理解した上で代理出産を依頼したのであろうか

次に国籍について、タイ国内で生まれた子は、代理出産であってもタイの国籍を取得する(タイ国籍法7条)。そして、父親が日本人男性であれば重ねて日本国籍も取得できる(日本の国籍法2条)。子は、いわゆる「二重国籍」の状態になる。

しかし、昨日のブログで書いたとおり、この日本人男性がカンボジア国籍を取得しているならば、その時から自動的に日本国籍を喪失する。男性が日本国籍を喪失した後に生まれた子は、日本国籍を取得できない。

報道によれば、すでに何人かの子供は日本のパスポートを取得し、日本やカンボジアに向けてタイから出国しているという。しかし、この子供たち全員が、本当に日本国籍を有効に取得しているか、疑問が残る。日本国籍がないにもかかわらず、日本のパスポートを取得している可能性がある

このように、外国での代理出産は、出産後にも様々な法律上の問題が生じるということを知らなければならない

もちろん、このような法律の壁を乗り越える手段がある。それが、国際養子縁組だ。代理出産のケースで国際養子縁組を利用すれば、代理母との法律上の親子関係が消滅し、代理出産を依頼した人(夫婦)の実子と同様に扱われることになる。

タイはハーグ国際養子縁組条約の加盟国である。他方、日本は同条約の加盟国ではない。しかし、日本には「特別養子縁組」という制度があり、この制度を利用して外国籍の子を養子に迎えれば国際養子縁組とほぼ同じ法的効果を得ることができる(日本の民法817条の2以下)。

タイなどの外国で代理出産を行うならば、生まれてくる子の福祉を最大限に図るには国際的な特別養子縁組が必要になることを視野に入れて計画しなければならない

【お断り】  
上記の意見は、カンボジア政府の見解ではありません。あくまでも私の個人的意見であることをお断りします。

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