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被災企業の二重ローン問題。“債務の株式化”で借金を免除します [被災企業の支援]


【Q】借金して購入した工場の機械が津波で損壊し、借金だけが残りました。会社の事業を再開するにはもう一度この機械を購入する必要がありますが、そのためには再び借金しなければならず、会社に返済する余裕がありません。被災企業の二重ローン問題に政府はどのような対策を検討していますか?

【A】再建が期待できる中小企業に対しては、「中小企業再生ファンド」が企業の借金(債務)を金融機関から買い取り、“債務の株式化”という手法により企業の借金を事実上免除して企業の債務負担を軽減する案などが検討されています。


〔ちょっと解説〕

 「二重ローン」問題は被災者個人が抱える住宅ローンだけではありません。被災した企業(特に中小企業)も、既存の借入金が残っているのに、事業を再建するために新たな借り入れが必要となる「二重ローン」の問題を抱えています。

 政府は今月17日、被災企業の二重ローン問題の対応策を公表しました。これによると、再建が可能と判断される企業については、独立行政法人の中小企業基盤整備機構などによる「中小企業再生ファンド」が、金融機関から中小企業向けの貸付債権を買い取ります。そして、再生ファンドは“債務の株式化”という手法により中小企業の借金を事実上免除し、既存の借金の負担を軽減して再建を支援する予定です。その他、新規の借り入れの負担を軽減するため、公的金融の低利融資、リース信用保証制度の創設、施設の無料貸与なども検討されています。

 ところで、再生ファンドを使った“債務の株式化”とは何でしょうか?ごく単純に説明すれば、次のようになります(実際の取引はもっと複雑です)。

 A会社は、B銀行から1000万円を借りて工場の機械を購入しました。ところが、津波により機械が損壊し、1000万円の借金はそのまま残っています。事業を再開するにはこの機械をもう一度購入する必要がありますが、そのためには再び借金をせねばなりません。でも、A会社には、これ以上借金をしても返済する余裕がありません。

 そこで、A会社を支援するため“再生ファンド”が登場します。まず、再生ファンドはB銀行からA会社の借金を買い取ります。つまり、B銀行のA会社に対する貸付債権1000万円を代金1000万円で買い受けるわけです。B銀行は貸付債権1000万円を再生ファンドに譲り渡す代わりに現金1000万円をもらうわけですから、1000万円の返済を受けたのと同じことです。むしろ、B銀行としては、A会社がきちんと返済してくれるか不安だったので、再生ファンドが買い取ってくれるのは大歓迎でしょう。

 A会社に対する貸付債権を買い取った再生ファンドは、A会社に1000万円を支払えと請求できるのですが、ここで再生ファンドは次のようにA会社に持ちかけます。
 「A会社さん、借金1000万円を再生ファンドに返済してください。でも、お金がないのは承知しています。だから、こうしましょう。借金1000万円を再生ファンドに返済したら、そっくりそのまま再生ファンドは1000万円をA会社さんに投資(出資)しましょう。こうすれば、差し引きゼロ円になるので、現金を動かす必要は全くありません。A会社の借金1000万円が、返済しなくてもよいA会社の資本(再生ファンドから投資されたお金)に変わるというだけのことです。ただし、再生ファンドは1000万円を出資したことになるので、A会社の株式1000万円分を発行して再生ファンドに渡してください。」

 つまり早い話、A会社の借金1000万円を帳消しにする代わりにA会社の株式1000万円分を再生ファンドに与えるのです。「借金(債務)を会社の株式に変える」ことが“債務の株式化”です。

 なんだか、詐欺取引の一種のように聞こえたかもしれませんが、会社法でも認められている企業を再生するための手法です。


<ご注意ください!>

このブログは個々の事案の法律相談を行う趣旨ではありません。一般論として法律の話をするブログです。このブログだけを見てご自身が抱えている法律問題を解決しようとしないでください。必ず最寄の弁護士会や法律事務所に行って詳しくご相談ください。

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