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地震保険には課題や問題点が多く制度の見直しが必要ではありませんか? [保険]


【Q】地震保険の加入率は23%くらいで低いと聞きました。地震が多い日本なのに、なぜ加入率が低いのですか?

【A】地震保険は、火災保険とセットでなければ加入できず掛け金(保険料)が高くなること、その割りに地震が起きても支払われる保険金額が低いことなどが理由です。


〔ちょっと解説〕

 地震保険は、地震のときの備えとして重要な保険ですが、その加入率は全国平均で23%くらいと意外に低いです。その理由を考えてみましょう。

 まず、地震保険は常に火災保険とセットで加入しなければなりません。火災保険が主たる保険で、地震保険はそれに付随する保険ですから、地震保険だけに加入することはできない仕組みになっています。そのため、加入者は「火災保険はA保険会社、地震保険はB保険会社」という自由な選択ができません。そして、各保険会社が地震保険の加入者を増やすために競争する必要性は低く、どこも似通った内容の保険となってしまい、魅力的な地震保険が売り出されることはありません

 また、地震保険の掛け金(保険料)は、住んでいる地域や木造か鉄骨かといった建物の種類に応じて金額が異なりますが、最大3倍以上の差があります。東京都や神奈川県などは最も高い保険料を支払わねばならない地域ですが、火災保険の保険料の上乗せとなるので、地震保険の保険料の負担はかなり重く感じられます

 他方、地震が起きたときに支払われる保険金額(補償額)には上限があり、低く抑えられています。地震保険は震災後の当座の生活の安定を目的とするだけなので、建物の時価を全額補償するものではありません。建物の時価額の30~50%を限度として補償するという上限が定められており、地震保険の保険金だけでは住宅を再建するための費用(再調達価額)をまかなうことは困難です。したがって、建て替えのために銀行等から再度ローンを組まざるを得ず、“2重ローン問題”が生じるのです(詳しくは前回のブログ記事をご覧ください)。

 さらに、地震保険は火災保険とセットであるにもかかわらず、地震保険金を受け取るときに同時に火災保険金を受け取ることはできません。つまり、地震による火災で自宅が全焼しても、火災保険金は支払われず、金額が低く抑えられた地震保険金のみが支払われるのです。

 このように、地震保険制度には課題や問題点があり、そのため魅力的な保険とはいえず関心が薄くなってしまうのだと思います。魅力的な保険にするには地震保険と火災保険を切り離して“保険の自由化”を図る必要があります。また、補償額の上限を撤廃し、建物の時価を全額補償することも可能にすべきでしょう(もっとも、補償額の上限を撤廃すれば、加入者が支払う保険料が大幅に引き上げられる事態が生じ得るので、慎重な検討が必要です)。

 地震保険は、1964年の新潟地震を受けて田中角栄元首相がリーダーシップを発揮して1966年に創設されました。それから半世紀が経とうとしていますが、社会情勢が大きく変化した今、地震保険制度を見直す時期にさしかかったのではないでしょうか?震災の悲劇をもっと軽減してくれる地震保険制度を構築すべきと思われます。


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