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業界が足並みそろえて節電対策。独占禁止法が禁止する“カルテル”では? [原子力災害]


【Q】今年の夏の電力不足が心配され、業界が足並みをそろえて節電対策を行っています。通常、業界が一丸となって取り組みを行うと独占禁止法の問題が心配されますが、節電対策の取り組みでは問題がないのでしょうか?

【A】業界団体が政府の削減目標を達成するための指針を示して各企業に要請することは許されますが、これを強制することは独占禁止法の問題が生じます。また、企業間で休業日の日程調整を行うことも許されますが、生産量や生産計画について調整したり情報交換したりすると独占禁止法に違反するおそれが生じます。


〔ちょっと解説〕

 東日本大震災や原発事故により、今年の夏は全国的に電力不足が心配されています。特に関東や東北地方では、政府が昨日(7月1日)、電気事業法に基づく「電力使用制限令」を発動し、大企業や工場などの大口契約者には最大使用電力の昨年比15%削減を義務づけました(罰則もあります)。

 このような政府の節電要請を受け、自動車業界は工場の休日を土・日曜から木・金曜にずらし、飲料業界も自動販売機の冷却時間を短縮するなど、業界が一丸となって節電の取り組みをしています。

 しかし、業界が足並みをそろえて取り組みをすると、独占禁止法に違反するのではないでしょうか?なぜなら、業界あるいは同業者間で生産や販売に関する調整を行うことは独占禁止法が禁止する「カルテル」に当たるおそれがあるからです(同法3条)。そこで、業界あるいは同業者間で取り組む節電対策が、どんな場合に許されて、どんな場合に問題があるのか、その線引きが重要になります。

 この点について、公正取引委員会は「業界団体等における夏期節電対策に係る独占禁止法上の考え方」を発表し、業界団体などが実施しても独占禁止法上問題にならないケースをいくつか例示しています。

 それによると、まず、業界団体が、政府から示された削減目標を達成するよう各企業に要請することは許されます。例えば、飲料メーカーの業界団体である“全国清涼飲料工業会”が、各メーカー間の調整を行って節電の業界指針をとりまとめ、これを各メーカーに提示して指針に従うよう要請することは大丈夫です。しかし、業界指針に従うよう「強制」することは独占禁止法に違反するおそれがあります(同法8条)。各メーカーに対してはあくまでも自主的な取り組みに任せるべきです。

 また、業界団体が各社の休業日の日程調整を行うことも許されます。しかし、各企業の生産量や生産計画、コストや製品価格などについて調整したり情報を交換したりすれば、カルテル行為とみなされて独占禁止法上の問題をはらみます。例えば、自動車メーカーの業界団体である「日本自動車工業会」は、休日を木曜と金曜に設定しましたが、各メーカーの生産状況などの情報は一切取り扱っていないとのことですから、この場合は問題がありません。

 政府が震災後、各業界団体に節電への対応を要請しましたが、これは業界内での競争を緩めることまで許容したものではありません。節電対策に便乗したカルテル行為に対しては公正取引委員会が厳しく監視していますので、従前どおりに独占禁止法に対する配慮が必要です。


<ご注意ください!>

このブログは個々の事案の法律相談を行う趣旨ではありません。一般論として法律の話をするブログです。このブログだけを見てご自身が抱えている法律問題を解決しようとしないでください。必ず最寄の弁護士会や法律事務所に行って詳しくご相談ください。

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