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ここに注意!譲渡証書で「譲受人とその相続人に土地を譲与する」と書いてあっても、相続人には権利が与えられない [アメリカ法]


日本で土地などの不動産を売買すれば、その証しとして「権利証」を作成することが多い。アメリカでも、不動産の売買には「不動産譲渡証書(deed)」という書面が作成され、土地の権利が譲渡人(grantor)から譲受人(grantee)に譲与される。

その譲渡証書の文例を見てみよう。英文読解力を試すつもりで、土地の権利が誰に譲与されているか、考えて欲しい。

「The Grantor, in consideration of the sum of ONE DOLLAR ($1.00) and other valuable consideration paid by the Grantee, the receipt of which is hereby acknowledged by the Grantor, does hereby grant, bargain, sell and convey unto the Grantee and its heirs, in fee simple, all of the property more particularly described in Exhibit "A" attached hereto and made a part hereof.」

法律文書の英文は回りくどいし、古めかしい英語が使われており、文の構造も複雑である。主要な部分だけをスッキリ現代風に表現しなおすと次のようになろう。

「The Grantor here sells and conveys all the property to the Grantee and its heirs.」

この英文をみると、譲渡人(the Grantor)が土地(property)の全部を売って譲渡していることがわかるが、その譲渡先は誰であろうか?いうまでもなく「to the Grantee and its heirs」の部分がそれを示しているが、直訳すると「譲受人(the Grantee)とその相続人(heirs)に」土地の権利が譲渡されていることになる。そうすると、譲受人とその相続人(例えば、子供や配偶者など)が共同で土地の権利を譲り受けるという意味になってしまうが、それで正しいであろうか?

正解は、譲受人だけが土地の権利を譲り受けるのであって、その相続人は何ら権利を譲り受ける者ではない。だから、譲受人はこの土地を相続人に断りもなく自由に他人に転売したり贈与したりすることができ、相続人はこれに対して一切文句を言えない。

そうすると、「to the Grantee and its heirs」を「譲受人とその相続人に」と直訳したのでは、相続人にも権利を与えることとなり、正確な日本語訳ではないことがわかる。では、「to the Grantee and its heirs」のうち「and its heirs」はどのような意味であろうか?そして、どのように日本語に訳すのが適切であろうか?そのヒントは、先ほどの文例で「to the Grantee and its heirs」の直後にある「fee simple」という法律用語である。日本語では「単純不動産権」と呼ばれている不動産権(estate)の一種であるが、この用語を理解しないと「to the Grantee and its heirs」の意味も正しく理解できないのである。

説明がやや専門的になり込み入ってきたため、ブログではこの程度でとどめておきたいが、詳しい内容を知りたい方は、今月26日開催の下記の“アメリカ不動産法セミナー”にぜひ参加していただきたい。

ここが重要!アメリカ不動産法の英語のつぼ ~日本人には難解なエステート制度を克服する~
http://www.kinyu.co.jp/cgi-bin/seminar/241413.html

なお、セミナー主催者の金融財務研究会のホームページは下記をご覧いただきたい。
http://www.kinyu.co.jp/index.html

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