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木嶋被告の大出さん殺害については有罪を認定しうるが、他の殺人2件は微妙か【連続不審死事件その6】 [裁判]


首都圏で2009年に起きた男性3人の連続不審死事件で、殺人や詐欺などの罪に問われた木嶋佳苗被告の裁判員裁判は昨日、論告求刑公判が行われ、検察官は死刑を求刑した。今日、弁護人の最終弁論と木嶋被告の最終意見陳述を終え、裁判員らは評議に入る。判決は4月13日に言い渡される予定だ。

このブログの【連続不審死事件その5】で述べたとおり、少なくとも大出さんに対する殺害については有罪と認定することが十分にできると思われる。昨日の検察官の論告を聞いても、説得力があった。殺害を示す直接証拠はないが、現場にはレンタカーのカギがなかったこと、マッチ棒があったにもかかわらずマッチ箱がなかったこと、大出さんの手には練炭を扱った際に付着する炭の痕がなかったこと、遺書もなかったことなど情況証拠を総合的に見れば、何者かに殺害されたことが強く疑われる。そして、木嶋被告の殺害への関与については、大出さんは事件当日、木嶋被告以外の第三者との接触がないこと、現場の練炭、コンロ、着火剤24個は数もメーカーもすべて木嶋被告が購入したものと一致すること、睡眠剤も木嶋被告が準備したハルシオン、レンドルミン等が大出さんの遺体から検出されたことに鑑みれば、木嶋被告が大出さんを殺害したと見るのが自然である。さらに、検察官は論告で、弁護側の言い分を証拠と照らして検証し、その不合理さを十分に指摘している。情況証拠だけでも木嶋被告が大出さんを殺害したと認定できるだけの証拠はそろっているといえよう。

これに対し、寺田さん殺害については客観的証拠が乏しく、木嶋被告が殺害したと認定するのは難しい状況だ。大出さんの事案と異なり、警察は当初、寺田さんが自殺したと判断し、練炭やコンロを押収していないし、遺体の司法解剖もしていない。犯罪立証の堅固な土台となる物証が少ないため、検察官の論告を聞いても論理の飛躍と感じる部分が残る。同じことは、安藤さん殺害にもいえる。この2件については、木嶋被告が殺害したと一応疑われるものの、明確に“クロ”と言うだけの証拠がそろっていない。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則に照らすと、有罪認定は厳しいといえよう。

しかし、本件の裁判の重要な点は、木嶋被告が問われた3つの殺人事件、詐欺、詐欺未遂など10件に及ぶ事件を一括審理されていることだ。裁判員法では、事件ごとに別々の裁判員が担当する区分審理も認められているが、裁判所は、いずれの被害者も婚活サイトを利用して木嶋被告と知り合うなど共通点が多いことからあえて一括審理を採用した。3つの殺人事件を個別に見れば、大出さん殺害は認定できても、寺田さん殺害と安藤さん殺害を認定するのは難しい。しかし、3件はほぼ同時期に起きており共通点、類似点が多い。木嶋被告の独特な男性観や金銭感覚、詐欺や詐欺未遂を含めた一連の事件の流れなどを全体的に考慮すれば、寺田さん殺害と安藤さん殺害も有罪と判断することが可能となるのではないか。この点は微妙であり、裁判員らは非常に難しい判断を迫られる。

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