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“度重なる男性の意識喪失”が木嶋被告の大出さん殺害に結びつく鍵となるか【連続不審死事件その5】 [裁判]

首都圏で2009年に起きた男性3人の連続不審死事件で、殺人や詐欺などの罪に問われた木嶋佳苗被告の裁判員裁判は先週、木嶋被告が体調不良を訴え被告人質問が延期された。今日、被告人質問が再開される。

これまでの被告人質問など証拠調べで明らかになったのは、木嶋被告と一緒に過ごした複数の男性が度重なって意識を喪失していることだ。詐欺事件の被害者とされる男性Aさんが木嶋被告とホテルで一緒に過ごしたとき、2度にわたって意識喪失になったことがあり、その後、現金などが見当たらなくなり警察に駆け込んだ。また、木嶋被告が殺害したとされる安藤さんも4回にわたって意識喪失になり、その直後に木嶋被告が安藤さんの絵画を持ち出したり、安藤さんのカードを使って現金を得たりしている。Aさんは「ホテルで木嶋被告に睡眠薬を飲まさせられた」と証言している。これに対し、木嶋被告は、Aさんに睡眠薬を飲ませていないと否定し、また、安藤さんについても、体調が悪く薬を服用しており、その副作用で意識を喪失したのではないか、などと主張している。

しかし、木嶋被告と交際していた複数の男性が度重なって意識を喪失した点を木嶋被告が合理的に説明しているといえるであろうか

まず、Aさんがホテルで意識を喪失した際、現金などがなくなっているが、これは木嶋被告が無断で持ち出したのではないか、と強く疑われる。ホテルの密室でAさんと一緒にいたのは木嶋被告しかいない。そして、2度にわたってAさんの現金などが紛失し、Aさんが警察に駆け込んでいることから、現金などの紛失についてAさんに勘違いがあるとは思えない。そうであれば、Aさんと一緒にいた木嶋被告が勝手にAさんの現金などを持ち出したというほかない。なお、この点に関して木嶋被告は黙秘権を行使し、ホテル内で何があったか、全く語らない。

次に、木嶋被告がAさんの現金などを無断で持ち出したとすれば、その手段として木嶋被告がAさんに睡眠薬を飲ませたと考えるのが合理的である。木嶋被告は「睡眠薬を飲ませていない」と供述するのみで、なぜ木嶋被告と一緒にホテルで過ごしたAさんが2度にわたって意識を喪失したのか、何ら説明がない。しかも、木嶋被告は意識が喪失したAさんを介抱することなくホテルを出ているが、ホテルで一緒に過ごすほどの関係にある男性が意識を喪失しているのに放置して自分だけホテルを去ることは不自然である。Aさんが証言するとおり、木嶋被告が睡眠薬を飲ませたとすれば、このような木嶋被告の行動もよく理解できる。そうだとすれば、木嶋被告がAさんの現金などを無断で持ち出すために睡眠薬を飲ませたと考えるのが合理的であり、木嶋被告の「睡眠薬を飲ませていない」との法廷供述は信用できない。

さらに、木嶋被告がAさんにホテルで睡眠薬を飲ませたと考えるならば、同じように安藤さんの場合も木嶋被告が睡眠薬を飲ませたのではないか、と強く疑われる。安藤さんが意識を喪失した4回とも、その直後に木嶋被告が安藤さんの財物を得ていることから、安藤さんの意識喪失と木嶋被告の財物取得との間には何らかの関連性があり、これを単なる偶然と見ることはできない。そして、親密に交際している安藤さんが意識を喪失しているのに、木嶋被告は介抱もせず安藤さんを独りにして去っていることは、Aさんの場合と同様に不自然である。そうであれば、安藤さんの意識喪失についても、Aさんと同様、木嶋被告が安藤さんの財物を得るために睡眠薬を飲ませたと考えるのが合理的である。

このように、木嶋被告が交際していた複数の男性に睡眠薬を飲ませたことが認められるならば、木嶋被告に殺害されたとされる大出さんについても、木嶋被告が大出さんに睡眠薬を飲ませ練炭自殺に見せかけて殺害したのではないか、と強く疑われる。大出さんは駐車場にあった車の中で練炭による一酸化炭素中毒で死亡したが、大出さんの遺体から睡眠薬の成分が検出されている。そして、同じ睡眠薬成分が木嶋被告の実家から押収されたすり鉢とすりこぎから検出されている。木嶋被告はかつて、睡眠薬をすり鉢ですりつぶして服用していた。さらに、大出さんが死亡する直前、木嶋被告は大出さんとドライブをし、遺体発見現場の駐車場で大出さんと別れた。木嶋被告には大出さんに睡眠薬を飲ませる機会が十分にあったといえる。そうであれば、Aさんや安藤さんの事案と同様、木嶋被告が大出さんに睡眠薬を飲ませ、練炭自殺に装って殺害したと考えても不思議ではない。この点について、木嶋被告は「大出さんに別れ話を告げると、大出さんは非常にショックを受け、それが原因で練炭自殺した」と主張する。しかし、大出さんに別れ話を告げたのはドライブ前であるが、別れ話をした男女が一緒にドライブすることは不自然であり、木嶋被告の主張をにわかに信じることができない。

少なくとも大出さんに対する殺害については、上記のような推論から有罪の認定をすることが可能ではなかろうか。しかし、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則により被告人は無罪と推定されている。無罪推定という高いハードルを乗り越えるのは、依然として困難がある

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