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9月1日から原発事故の損害賠償はADRを利用して紛争を解決できます [原子力災害]


【Q】福島の原子力発電所事故による損害賠償では、東京電力との賠償交渉が必要になると思われますが、もし賠償交渉がうまく行かなかったら、裁判を起こすしかないのでしょうか?他に解決できる方法がありませんか?

【A】文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は、損害賠償に関する東京電力との交渉を裁判以外の方法で解決する手続きを9月1日からスタートさせる予定です。


〔ちょっと解説〕

 福島の原子力発電所事故による損害賠償が本格化しそうです。すでに文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が今月5日、中間指針を取りまとめ、損害賠償の範囲や金額について一定の基準を示しました。また、損害賠償のための資金が不足しないようにするための制度をつくる原子力損害賠償支援機構法が今月3日に成立しています。

 原発事故による損害賠償の大きな枠組みが設定され、これからは個別の事案、つまり個々人や各会社の損害を個別具体的に算定して賠償していく段階に入ります。個別の事案において東京電力との賠償交渉がスムーズに行けば、損害賠償金が早い段階で支払われることが期待できます。

 しかし逆に、もし賠償交渉がもめると、なかなか賠償金を払ってもらえないでしょう。その場合、裁判に持ち込まなければならなくなるかもしれません。でも、裁判は時間もお金もかかります。弁護士に依頼しなければ通常、裁判を円滑に進めることができません。裁判沙汰を好まない人も多く、賠償交渉がもめたときに「裁判以外の解決方法があればいいのに」と思われるかもしれません。

 そこで、原子力損害賠償紛争審査会は、賠償交渉を裁判以外の方法で解決する手続きを9月1日からスタートさせる予定です。このような裁判によらない紛争の解決方法を英語で「ADR (Alternative Dispute Resolutions)」と呼んでいます。原子力損害賠償紛争審査会は、原子力損害の賠償に関する紛争について和解の仲介を行うことが認められています(原子力損害の賠償に関する法律18条2項)。今回、この権限に基づいて同審査会は、福島県郡山市と東京の2箇所にADRの拠点を置き、福島県弁護士会をはじめ全国の弁護士の協力を得て、賠償交渉を仲介することになる予定です。

 ADRを利用すれば、比較的短期間で費用もあまりかけずに、弁護士に依頼しなくても紛争を解決できます。被災者個人も会社、団体も利用できます。損害賠償金額の多寡も関わりありません。賠償請求できるかどうか迷うような小規模な事案でも気軽に相談できるようになるでしょう。


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コメント 1

YU

最近原発被災者の損害賠償について、さまざまなニュースを見ますが、このADRというのは、やはり弁護士が仲介するものなのですね。原発被災者弁護団とはまた異なるのでしょうか。仕組みがいまいち理解できません。
ADRは弁護士以外が仲介に入るものという事であればスッキリするのですが。。
相談者が好きな方法を選ぶという事ですか。また、どちらの方法にもメリットデメリットがあるのでしょうか。。難しいです。


by YU (2011-08-21 19:22) 

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