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再度の内閣不信任案の提出は必ずしも憲法違反ではありません [政治]


【Q】菅内閣に対する内閣不信任案は、すでに6月2日に衆議院で否決されています。再び内閣不信任案を衆議院に提出すると「一事不再議」に違反することが指摘されていますが、これはどんなルールでしょうか?

【A】広い意味では「会議で一度決定された事柄は、再び審議されることができない」という会議におけるルールです。国会の場合には「衆議院や参議院で既に議決した議案は、同一の会期中に再び議論することができない」というルールになります。


〔ちょっと解説〕

 いまの国会は今月31日で会期末を迎えますが、菅首相がその後も引き続き首相を続ける可能性があることから、自民党をはじめ民主党の一部からも「内閣不信任案」の再度の提出を視野に入れた発言が聞かれます。

 菅内閣に対する内閣不信任案は、すでに6月2日に衆議院で否決されています。再び内閣不信任案を衆議院に提出すると、「一事不再議」という国会のルールに違反するおそれがあります。

 この「一事不再議」とは何でしょうか?法的根拠があるのでしょうか?

 広い意味では「会議で一度決定された事柄は、再び審議されることができない」という会議におけるルールです。国会の場合には、「衆議院や参議院で既に議決した議案は、同一の会期中に再び議論することができない」というルールになります。一つの事項がせっかく決まったのに、また同じ事項で議論が蒸し返されると非効率的ですから、このようなルールが認められるのです。

 とはいっても、憲法や法律のどこを見ても、このルールを明確に規定している条文がありません。現在の憲法(「日本国憲法」)の前身に当たる「大日本帝国憲法」には、一事不再議の原則を採用した条文がありました(第39条)。しかし、現在の日本国憲法や国会法には一事不再議を定めた規定がありません。ですから、いわば「国会における慣例」として(さらには、憲法の解釈として)一事不再議の原則が今に引き継がれているといえます。

 では、今回のようにすでに否決された内閣不信任案を再び衆議院に提出することは違法となるのでしょうか?

 全く同一の内閣不信任案を再提出すれば、一事不再議の原則に反しますので、憲法違反とされるでしょう。しかし、内閣不信任の理由が、前回の議決後に生じた新たな事情に基づくものであれば、一事不再議の原則に反しないと考えることが可能です。このような新たな事情に基づく内閣不信任の理由は、前回の不信任案のときに審議されていないわけですから、同一事項の蒸し返しとは言えず、一事不再議の趣旨に何ら反しないからです。

 ですから、菅内閣に対する再度の内閣不信任案が、前回の不信任案が否決された6月2日の後に生じた事情を理由とするときは、一事不再議の原則に違反せず、衆議院はこれを審議・議決しても憲法に反しないと思われます。6月以降、震災復興担当大臣と原発事故担当大臣が新しく選ばれ、閣僚のメンバーも入れ替わっているので、このような事情を踏まえて不信任の理由を挙げるならば、前回の不信任案と異なる議案といえるのではないでしょうか。


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