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ご注意!相続を放棄できる期間が延長されるのは“被災した相続人”だけです [相続・遺言]


【Q】東日本大震災当時、父と私は宮城県の実家に住み、父は津波で亡くなりました。父の相続人は私と兄の2人ですが、兄は震災当時、仕事で東京都に住んでいました。父には多額の借金があるので相続を放棄しようと思います。相続放棄ができるのは3ヶ月以内ですが、震災の特例としてこの期間が今年の11月30日まで延長されたと聞きました。私と兄は相続放棄をすることができますか?

【A】相続を放棄できる期間が延長される対象者は“被災した相続人”です。相続人が複数いる場合、被災者である相続人のみ期間が延長されます。ですから、震災当時、宮城県に住んでいた「私」は相続放棄をすることができますが、東京都に住んでいた兄は3ヶ月が経過したので相続を放棄することができません


〔ちょっと解説〕

 上記の例で相続放棄ができる期間は父の死亡を知ったときから3ヶ月以内です(民法915条1項)。しかし、震災の特例として、東日本大震災の被災者である相続人についてはその期間が2011年11月30日まで一律に延長されました(「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律」参照)。このことは、ブログで以前にもお話しました。

 そうすると、相談者の「私」と兄はそろって相続放棄ができそうに思えますが、本当にそうでしょうか。結論を先に言えば、相続放棄ができるのは「私」だけで、兄は相続放棄ができません

 上記の例のように相続人が複数いる場合、その一部の相続人だけが東日本大震災の被災者であるとき、相続人全員について相続を放棄できる期間が延長されるのでしょうか。答えは“ノー(No)”です。期間が延長されるのは被災者である相続人だけです。

 なぜ相続人ごとに違った取扱いがされるのでしょうか。もともと相続放棄は個々の相続人の自由な判断によって決められるものであり、相続放棄の3ヶ月という期間もそれぞれの相続人ごとに進行するのが建前です。そして今回の震災では、相続人が被災者である場合、被災による生活の混乱のため3ヵ月の期間中に相続放棄の判断をするのが困難であることから、被災者である相続人を保護するため特別に期間を延長しました。これに対し、相続人が被災者でない場合、被災による生活の混乱が少ないし、民法に基づいて家庭裁判所に期間伸長の申し立てをすること(915条1項ただし書)に支障もなかったわけですから、3ヵ月の期間を延長する必要がないとされました。

 したがって、上記の例では、震災当時、宮城県に住んでいた「私」は被災者ですから、「私」は相続を放棄できます。これに対し、東京都に住んでいた兄は被災者ではありませんから、3ヶ月の期間が経過しているので、兄はもはや相続を放棄できません。結局、「私」だけが相続放棄でき、もし「私」が相続放棄すれば、兄が父親の借金を単独ですべて引き継ぐことになります。

 このように、相続人が被災者かどうかで結論が全く異なるわけですが、被災者とされるのは、大震災が発生した3月11日に「東日本大震災に際し災害救助法が適用された市区町村の区域から東京都の区域を除いた地域」に住んでいた人です。この表現ではわかりにくいので、被災者かどうかを詳しく知るには下記の法務省のホームページ(特に“Q2”)をご覧ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00092.html


<ご注意ください!>

このブログは個々の事案の法律相談を行う趣旨ではありません。一般論として法律の話をするブログです。このブログだけを見てご自身が抱えている法律問題を解決しようとしないでください。必ず最寄の弁護士会や法律事務所に行って詳しくご相談ください。

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