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夫と子が津波でともに死亡。夫の遺産はどのように相続されますか? [相続・遺言]

【Q】東日本大震災の津波で幼い息子をともに亡くしました。私たち夫婦には他に子供がなく、夫の母親(姑)が健在です。夫には3000万円の銀行預金がありますが、この遺産をどのように相続することになるのですか?

【A】津波で亡くなった夫と子の死亡の順序がわからない場合同時に死亡したと推定され、夫と子の間では相続が起こりません。ですから、夫の遺産について、妻が3分の2(2000万円)を取得し、夫の母親(姑)が残り3分の1(1000万円)を取得します。


〔ちょっと解説〕

 東日本大震災に関する法律相談では、6月に入ってから相続や遺言に関する相談が急増してきました。残された遺族の生活再建のためにも財産の相続は現実的な問題として直面する時期のようです。

 上記の例のように複数の親族(夫と子)が津波でともに死亡した場合、どちらが先に死亡したかによって相続の結果が大きく異なってきます。

(1)夫が先に死亡した場合
 この場合、夫の財産は、まず夫が死亡した段階で、妻が2分の1、子が2分の1ずつ相続します(民法900条1号)。次に、子が死亡した段階で、その子の財産を妻が相続します(民法889条1項)。結局、夫の財産は妻が全部相続することになります。

(2)子が先に死亡した場合
 この場合、夫が死亡した時点で子が既に死亡しているのですから、子は相続人になりえず、夫の財産は、妻が3分の2、夫の母親(姑)が3分の1を相続します(民法900条2号)。

 このように、複数の親族を亡くした場合、どちらが先に死亡したかは重要なのですが、震災の場合にはどちらが先に死亡したか不明なことが多く、相続をどうしたらよいか、大きな問題が生じます。

 そこで民法は、複数の人が死亡し、どちらが先に死亡したか不明の場合、これらの人が同時に死亡したと推定しています(32条の2)。これを「同時死亡の推定」と呼んでいます。同時に死亡した人同士では相続は起こらないので、相続の問題を適切に解決することが可能となります。

 上記の例で、夫と子のどちらが先に死亡したか不明の場合、同時に死亡したと推定され、夫と子の間では相続が起こりません。ですから、残された遺族である妻と夫の母親が相続人となり、夫の遺産について、妻が3分の2(2000万円)を取得し、夫の母親が残り3分の1(1000万円)を取得します。


<ご注意ください!>

このブログは個々の事案の法律相談を行う趣旨ではありません。一般論として法律の話をするブログです。このブログだけを見てご自身が抱えている法律問題を解決しようとしないでください。必ず最寄の弁護士会や法律事務所に行って詳しくご相談ください。

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