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今日、被害者の遺族も“論告・求刑”を行うか、注目されます【市橋被告の裁判員裁判】 [裁判]


【Q】今日、千葉地裁で市橋達也被告に対する裁判があり、弁論手続が行われるそうです。弁論手続とは何ですか?また、リンゼイさんの両親が裁判に参加していますが、弁論手続ではどんなことができるのですか?

【A】弁論手続では、検察官被告人・弁護人が、それぞれの立場から事件に対する意見を総まとめします。また、リンゼイさんの両親も、被害者参加人として自らの意見を述べることができます。


〔ちょっと解説〕

 今日、千葉地裁で市橋達也被告に対する裁判員裁判の第6回公判が開かれる予定です。「第6回公判」ということは、裁判が始まって6日目ということです。ですから、審理も大詰めを迎え、今日は「弁論手続」を行うことになっています。

 市橋被告は、千葉県で2007年、英会話講師のイギリス人女性リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)を殺害したとして殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われています。殺人罪の最高刑は死刑で(刑法199条)、強姦致死罪の最高刑は無期懲役です(刑法181条2項)から、結局のところ死刑になりうる罪を問われているわけです。

 さて、今日予定されている「弁論手続」とは何でしょうか?

 弁論手続では、全ての証拠を調べ終えた後、検察官と被告人・弁護人が、それぞれの立場から事件に対する意見を総まとめします。

 まず、検察官が意見の総まとめをします。これを「論告・求刑」と呼んでいます。検察官は、市橋被告が有罪であることを証明するために法廷で活動してきたのですから、「法廷に出された証拠によれば、市橋被告が殺人罪と強姦致死罪を犯したことは間違いない」と意見をまとめるでしょう。この部分が「論告」です。そして、論告の後に、市橋被告に対してどんな刑罰が相当か、検察官の意見を述べます。この部分が「求刑」です。

 検察官の論告・求刑が終わると、弁護人と被告人も最終的な意見を述べます。これを「最終弁論」と呼んでいます。しかし、市橋被告の事件では、検察官の論告・求刑の後、弁護人らが最終弁論をする前に、「ある人」が意見を述べるのではないかと思われます。その人は、被害者の遺族です。

 殺害されたリンゼイさんの両親が、この裁判に参加するためにイギリスから来日しています。単なる傍聴ではありません。「被害者参加制度」という制度を利用して検察官の隣に(あるいは後ろの座席に)座り、裁判に直接参加しているのです。だから、今日の弁論手続では、リンゼイさんの両親も意見を述べることができます。例えば、市橋被告は殺意がなかったと主張していますが、リンゼイさんの両親が「証拠によれば殺意があったことは疑いなく、殺人罪だ」と犯罪事実について意見を述べることができます。また、「市橋被告には最高刑(つまり死刑)が相当だ」と刑の重さに関しても意見を述べることができます。つまり、被害者の遺族(被害者参加人)も、検察官の論告・求刑と同じように意見を述べられるのです(刑事訴訟法316条の38第1項)。

 そこで注目されるのが、検察官の求刑とリンゼイさんの両親の求刑が同じかどうか、という点です。リンゼイさんの両親は、自らの証人尋問で「最高刑(死刑)を望む」ことをすでに明言しています。これに対し、検察官はどのような求刑をするでしょうか。死刑か無期懲役か。検察官が遺族の思いをどこまで取り入れて求刑するか、焦点の一つになります。


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